再会の 道を閉ざして ゴミ袋

{きっと タクヤくんトイレで見たイルリガートルで幻滅してしまったのね
 人生最大の失敗ね あー悔しいー」
「いいじゃないの 柚木!あなたはあなたよ! しっかりせい でもー」
{でもーじゃない!}

などと柚木の中の葛藤が収まる気配はなく、時々拓哉が夢にまで現れた。

一方、拓哉もあの日手渡された、柚木の携帯電話を飲み込んだことですっき
りした筈だったのだが・・・・・・人間そう単純ではない。

精気が満ちてくるにつけ、柚木のトイレで見たイルリガートルが、そして柚木が
セルフ浣腸している姿がトラウマの様に脳裏に浮かんは消えた。

「あー 柚木さんに また逢いたい 会って話をしてみたいーーー」

{あー もう一度でいいからタクヤくんに逢いたいなー}
二人は自分の中のすなおな感情と、抑圧した自虐的な思い込みの中でいつしか
本気で思いあう仲になっていた。

「逢えーない時間がー時間がー愛 育てる のさー・・・・・」
柚木は、思わず母が時々口にしていた歌詞を口ずさんで絶句した。
「あの時間って これなんだわ!」
{もしかして ママも・・・・・
 まさかー あの生真面目な・・・・逢えない時間が・・・・・か」
柚木は、急に母のことが愛おしくなった。

柚木の母は、冗談も通じない様な堅物だったが、機嫌が良い時はお気に入り
の歌詞の一節を口ずさむことがあった。
{逢えない時間が愛 育てる のさー・・・・・もしかして ママの
 こんな気持ちを経験して パパと結ばれた? それとも不倫?
 まさかー不倫は無いわね・・・・いやいや生真面目だからこそ・・・}

{あれっ?これは もしかしてタクヤくんの痕跡?}
ふと見たトイレの壁に身に覚えのない薄いシミが付いていた。
そのシミは、よく見ると拓哉の横顔の様に見えないことも無かった。
柚木が、そのシミに手を添えると近頃は夢にまで現れる優しい拓哉が今にも
声を掛けるような錯覚に駆られた。


柚木さん、ごめんなさい 僕 柚木さんが浣腸している姿を
 妄想してトイレで恥ずかしい事してしまいました
 だから もう柚木さんに合わせる顔がありません」

{ううん そんなこと あたしだって トイレで浣腸して
 オナニーする変態女なんだもん お互いさまよー だから・・・・}


柚木は、拓哉が妄想したように、イルリガートルで高圧浣腸している我慢して
いる間に、拓哉の横顔のシミに片手を添えて股間に手を当てた。

丁度同じ頃、拓哉も柚木の浣腸している姿を妄想して自慰行為をしては射精
に至ると自己嫌悪にさい悩まされてた。
「俺って 本当に最低 もう諦めろ拓哉!」


そんな風に悶々とした日々、久しぶりに出かけたデーパトのオーガニック野菜
の売り場で、柚木の視線は拓哉の顔が印刷された袋に釘付けになった。
{タクヤのラディッキオ?}
それは見た目は赤紫色のキャベツのようなラディッキオという野菜だった。

{あっ  柚木さんだ 僕の野菜を手にしている!}

{声を掛けるか? どうしよう どうしよう あっ 買い物籠にいれたぞ!
 よし このまま様子をみてみよう}

拓哉は、はやる気持ちを抑え様子をみる事にした。

それから数日たっても、当にしていた柚木からの連絡は来なかった。
「やはり 柚木さんは僕に興味はなかったのかー
 しょうがない もう 諦めろ拓哉!  うん諦めるしかないな」
拓哉は声に出して言うことで自分の心に柚木封印した。

一方の柚木は、あの日購入したラディッキオを、サラダにして食べては見たが
ちょっとほろ苦い味が苦手で、お世辞にも美味しいとは思えなかった。
{ここに電話すれば タクヤくんとお話出来る
 でも今頃になってどうして電話をと問われるかも・・・・・
 本当の事は言えないし・・・・・・あああああーもういいやーー}

柚木は、拓哉の顔が印刷された袋をゴミ袋に入れた。
ついに自分から電話する2度目のチャンスまで閉ざしてしまった。
「やはり縁がなかったのね さようならタクヤくん」
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