梅雨空に 有機野菜を 売る男

これは、ある友人の不思議な体験談で、いまも進行形なのだそうです。
どんな結末になるのか、想像しながら暖かく見守りましょうね。


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篠崎 柚木(仮名)は、小さな輸入家具専門商社の人事部に在籍して数年
になる若手女子社員である。
ところが、数か月前から猛威を振るう新型ウイルスの影響により、来年度
の新規採用も中止となり5月からは、テレワークという体の良い自宅待機
組にさせられてしまった。
給与は出ると言っても60%もカットになり、リモート会議以外は特にノルマ
もやることもない退屈な日々に飽き飽きしていた。

{あーひま 医療関係者には悪いけど なんか 刺激的なことないかなー} 

ピンポーン
17時を少し廻った頃、モニターカメラ付きインターフォンが鳴った。

{あらっ! こんな寒い雨の日になにかしら? またNHKの勧誘?}

ピンポーン

「はーい」

「あのー オーガニック野菜販売キャンペーンなんですがー」

インターフォンのモニター画面は2~3歳年下の長身の男性が映っていた。

「わたし あまり自炊はしませんので 結構です」

「新鮮な果物も有りますので ご覧になるだけでもー」

「いえ  今日は結構です」

「では 失礼します」

ーーーー翌日-----

ピンポーン

{あらっ 昨日と同じ時間に! また同じ人?}

「今日は もぎたての果物をお持ちしました」

「いえ  結構です」

「ご試食だけでもー」

{しつこい人ね}

「 結構です」


「でも せっかくー」

「 結構です」

「失礼いたしました」
モニター越しの若い男性は深々とおじきをして足早に去っていった。

{なんなの あの人 しつこいわね でもちょっとタイプかな}

「ばか! ただのオーガニック野菜販売員じゃない!」
柚木は、思わず一人言を呟いた。

ーーーー翌日-----

ピンポーン

インターフォンのモニター画面は、昨日と同じ男性が映っていた。

{あっ! またあの人}

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