秘め事を 見られし儚い 恋終わり

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秘め事を　見られし儚い　恋終わり

「本当は見たんでしょ　あれを！」

「いえ　なにも　ただ・・・・・」
「ただ　なに？・・・・・」
「ただ・・・・・天井から変なポリタンクの様なものが・・・・・」

｛あー　もう終わりだわ　拓哉にあたしがイルリガートルで高圧浣腸して
　オナニーまでしている姿を想像されたに違いないわもう終わりね｝

　　　
「そう　実はね・・・・あのね・・・」
柚木は隠さず正直に話そうと思ったが、つい口ごもってしまった。

「柚木さん　ぼっ僕今日は失礼します　有り難うございました」

「そっ　そうね　もし嫌じゃなかったらまた遊びに来てね」
柚木は決まり悪そうに、社交辞令的に応えるのが精いっぱいだった。

「待っててね　お洋服もう乾いてると思うわ」
柚木は急いで浴室乾燥機の成果を確認しに行った。
｛うん　だいぶ乾わいてる｝

「はい　どうぞ」

「有り難ございます」

拓哉は急いで、まだ生乾きの暖かい上着服を羽織ると玄関へ向かった。

「あっ　ちょっと待って　はい　タクヤくん　これあたしの携帯電話」

「えっ・・・・」
「変な女と思わないでね　可愛い後輩への挨拶替わりよ」
「じゃー　僕も忘れそうでした」
と拓哉は、照れくさそうに薄いベージュ色の名刺を差し出した。

「有り難う」

「では失礼します」

「うん　さようならタクヤくん　また・・・・・」
柚木は思わず、もう拓哉は来ることはないだろうと思い口ごもった。

拓哉は、いつもの様に深々とおじきをして足早に去っていった。

｛さようなら　可愛い後輩くん｝
柚木は、手にしたベージュ色の名刺を一瞥してゴミ袋に入れた。

拓哉も、柚木が携帯電話を教えてくれたのは、単なる社交辞令だろと思い込
み、もう柚木に付きまとうのは止めようと決心していた。

「さようなら　僕の大事な人　篠崎柚木さん」
拓哉は、柚木の携帯電話を書いた紙を口に含んで一気に飲み込んだ。
そうすることが、柚木のトイレで自慰行為という最低な行為をした

自分への戒めでもあった。

それから数日　ひと月　半年と、淡い期待も裏切られ、拓哉が二度と訪問する
こともなくなり、電話もメールさえ来なかった。
｛きっと　タクヤくんトイレで見たイルリガートルで幻滅してしまったのね
　人生最大の失敗ね　あー悔しいー」

「いいじゃないの　柚木！あなたはあなたよ！　しっかりせいでもー」

｛でもーじゃない！｝
などと柚木の中の葛藤が収まる気配はなく、時々拓哉が夢にまで現れた。

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